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新国《さまよえるオランダ人》鑑賞:2007.3.1 [オペラ生舞台鑑賞記録]

 新国名物、平日昼下がりのオペラに行ってきました。演目は《さまよえるオランダ人》。ワーグナーの楽劇は、ちょっと苦手というイタリアオペラ好きの人にもすんなり入って行ける従来型のオペラですが、後の楽劇の第一歩を踏み出した作品と言われています。《さまよえるオランダ人》は、ワーグナー自身の死ぬかと思ったほど怖かったという、ロンドン航路の嵐の実際の体験の印象だそうで、非常に劇的な音楽です。しかし、陰気だとか、観客の趣味に合わないとかで、なかなか上演してもらえなかったとか。意外ですね、オペラって陰気で暗いものが多いのに......
 さて、今回の公演は、ソリスト陣の声の迫力に圧倒されました。男声合唱団が、これまた大音響、大迫力で、しかも呼吸もピッタリで素晴しかったです。演出も奇をてらったものではなく、シンプルですが、迫力がありました。最後が、台本?とは違っていて、オランダ人どうするの!船が行っちゃうよ!と最後まで目が離せませんでした。
※平土間10列ちょっと右よりで鑑賞。
 《さまよえるオランダ人》は、数年前、ライモンディが歌うヨなんちゃってことで、興味を持った作品なんですが、こうして実演に接してみると、ライモンディにとても似合いそうな役で、実現していれば、きっとユニークなオランダ人になっただろうな、と思いました。


主要キャストの一言コメント
★オランダ人:ユハ・ウーシタロ Juha Uusitalo(1964年生まれ、フィンランド出身)
フルート奏者から歌手へ転向したそうですが、フルートがピッコロにみえて、ピッコロは割り箸にみえるかも......実に堂々とした体格、写真を並べておきましたが、ターフェルタイプですが、ターフェルより、すっきり、きりりとして好感もてます。とにかく声が大きい、最後まで、フルヴォイス。この調子で、イタリアオペラのバリトン役を歌ったら、イタリアオペラにはきこえないような気がします...... オランダ人は、得意のレパートリーで、スカラ座、ウィーン、ミュンヘン、ベルリン等で歌っています。
★ゼンダ:アニヤ・カンペ Anja Kampe
ワグネリアンヴォイスとでもいうのでしょうか、力強く大きな声ですが、よくありがちなヒステリックな声ではなく、柔らかく豊かな声です。ライモンディが《オランダ人》を歌う条件として、「ゼンダは美しくなければなりません」と言ってましたが、彼女なら合格ですよね。ソリストの中では、一番よかったとおもいます。
なかなか興味深い略歴ですので、ご紹介します。
東ドイツの小さな町で生まれる。幼い頃、母が歌っていたその地方のフォークソングを聞いて育つ。6歳で、ギターを勉強するつもりだったが、すでに定員いっぱいだったので、第二希望の声楽教室に入る。10代になって、ドレスデンで声楽を学ぶ。1989年、イタリア人と結婚して、全体主義の国から逃れ、イタリアに移り住む。彼女は、完全にイタリアナイズされ、ドイツ語より、イタリア語を話すほうが容易になるが、このことは、声楽的危機に陥ることとなる。つまり、イタリアオペラではドイツ的であり、ドイツオペラではイタリア的でありすぎた。1991年トリノで、イタリア語の《ヘンゼルとグレーテル》でデビューしたものの、1990年代は、子育てと翻訳の仕事に専念せざるを得なかった。しかし、2000年に、ヴォーカルコーチは、ワーグナーを歌うことを熱心に勧め、彼女もそれに従い、本領を発揮する。2002年にバイロイトで、《ラインの黄金》のフライアを歌い、2003年には、ワシントンナショナルオペラで、《ワルキューレ》のジークリンデを歌い、絶賛される。《さまよえるオランダ人》のゼンダは、主要なレパートリーである。
★エリック:エンドリック・ヴォトリッヒEndrick Wottrich
ドイツを中心に活躍中。容姿、声ともテノールっぽくない、とても男性的。優男(やさおとこ)系のテノールが、歌うと「何、言ってるのエリック!」になってしまうのだが、ゼンダの行動を批判しつつ、自分の気持ちを訴える場面は、なかなか説得力があり、ゼンダもうなだれるだけで、反論の余地無し。声もテノールっぽくない、バリテノールというのでしょうか。
《さまよえるオランダ人》は、大筋は、ハイネの小説とハウフの『幽霊船の物語』を参考にしたが、台本は、ほとんどワーグナーの独創ということですが、エリックの言ってること、私には、痛いところをつくじゃない、エリックの言う通りよね....とおもいました。
ちょっと笑い話を。エリックって、漁師だと思っていましたが、猟師だったんですね。お恥ずかしい話ですが、台詞で、ちゃんとわかるところがあるのに、見逃してました。今回一緒に行った知人に、「エリックは漁師と言うよりは、熊を追っかけている猟師みたいな熊男だったわね」と言ったところ、「あら、エリックは猟師ヨ」と言われちゃいました。(笑
★ダーラント:松位 浩
ドイツで活躍中だそうですが、体格もりっぱで、外国人組と互角でした。サルミネンのダーラントだと、金銀財宝に目がくらんだ、強欲な父親にみえてしまうのですが、このダーラントは、金持ちの男と結婚させれば、娘も幸せ、玉の輿、と思っているような実直、愚直な感じを受けました。見た目って、かなり影響しますね。
★舵手:高橋 淳
新国の専属?といえるほど、主役級から性格的脇役をこなしている、毎度お馴染みのテノール。この役は、けっこう歌うところが多いんですね。オランダ人とゼンダの迫力に影響されたのか、いつもより、声が大きかったような気がします。
公演日程
2007年2月25日,3月1,4,7,10日
【指揮】ミヒャエル・ボーダー
【演出】マティアス・フォン・シュテークマン
【美術】堀尾 幸男
【衣裳】ひびの こづえ
【照明】磯野 睦
【舞台監督】菅原 多敢弘
【合唱指揮】三澤 洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団
【協力】日本ワーグナー協会
【主催】新国立劇場
キャスト
【ダーラント】松位 浩
【ゼンタ】アニヤ・カンペ
【エリック】エンドリック・ヴォトリッヒ  
【マリー】竹本 節子
【舵手】高橋 淳
【オランダ人】ユハ・ウーシタロ

写真右上をクリックすると新国のサイトでその他の写真も見られます。下の写真は、バイエルン、コヴィチュニー演出のもの。写真をクリックすると、ビデオクリップが見られます。最初は、リハーサルのビデオかとおもいましたが、リハーサルにトレーナーというのはあるでしょうが、いくらなんでもバスローブということはないでしょうから、これは、スポーツジムの健康オタクの《オランダ人》なのかしら。どういう演出かは皆目見当がつきませんが、バスローブの牛太郎オランダ人が見られますヨ。ミュンエンのビデオクリップのバスローブ男はエリックのようです。DV男みたいです<(_ _)>(3.4追記)


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コメント 21

ヴァラリン

牛太郎様のお写真が、ステキ過ぎます(^^;

> とにかく声が大きい、最後まで、フルヴォイス。

そう、そう、ベルリンの時もそうでした(^^;ほんと、プロレスラーみたいな大男でしょ?
言われてみればターフェルに似ているかもしれませんね。
4月下旬~5月上旬にかけて、バレンシアで「ラインの黄金」と「ワルキューレ」やるんですが、このプロダクションでヴォータン歌うそうです。

バイエルンのビデオクリップ、サルミネンと牛太郎様のダンスが、可笑しすぎます(^^;

アニヤ・カンペ、とても良さそうですね。来週が楽しみです。
牛太郎様つながりで、ベルリンの記事をTBさせて頂いたんですが、今日はソネットとニフティの相性が悪いのか、反映されませんね…
(edcさんのところにも送ったんですけど・・;)
by ヴァラリン (2007-03-02 15:51) 

おさむ

ウーシタロはやはりすごかったんですね ききたかったです。松位さんもきいてみたかった、ワーグナーで外国人と声と体で張り合えるなんてすごいことなんですよホントに。次の運力ではインドラ・トーマスやVチェルノフがすごそうです。世界の一流歌手を聴こうと思ったら、高額な海外の劇場引越し公演よりも新国をマメに観に行った方がお得かもしれないですね。 
by おさむ (2007-03-02 17:14) 

euridice

>興味深い略歴
ありがとうございます。
>結婚して、全体主義の国から逃れ
こういう人、何人も知っているので、なんだか親しみを感じちゃいます。長い金髪と透き通るような肌の超美人の若いロシア人女性はドイツ人(旧西ドイツ)が夫でしたが、曰く、東ドイツ人かどうかが要注意なのよ^^;

ほんとにすばらしく強力な声でしたね。しかも、それが自然で心地よい。肥満はそういう声の必要条件ではないという証明でした。
by euridice (2007-03-02 17:18) 

Sardanapalus

キャー牛太郎様~☆(^^)

フルート吹いていたなんて到底思えない体格ですよね。並べると確かにターフェルと似てます!思わず噴出してしまいました。二人で海賊コンビだわ~。でも、ミュンヘンの演出よりはきりりとした衣装ですね。

地方在住者は新国公演でも交通費と宿泊費を入れてしまうと懐に厳しい金額になってしまうのでなかなか見れませんが、こうしてネット上で楽しいレポートを読めて嬉しいです。
by Sardanapalus (2007-03-02 19:55) 

keyaki

ヴァラリンさん、TBどちらに問題があるんでしょうね。
オランダ人の詳しいヴァラリンさんの感想、楽しみにしています。
by keyaki (2007-03-03 11:52) 

keyaki

euridiceさん、ほんとうに、共産圏の人たちは、自由がなかったんですね。それが、つい最近の話なんですものね。
カンペは、1994年にフェッラーラで、アバド指揮《フィガロの結婚》で、なんとマルチェリーナを歌っていましたよ。共演者カードを作らなくては。
by keyaki (2007-03-03 12:00) 

keyaki

Sardanapalusさん、ターフェルの、このスカルピアの写真を見たときから、幽霊船の船長にしかみえませんでしたよね。でもこれでは、ゼンダに断られそう。(笑
ターフェルはオタンダ人、まだレパートリーじゃないのかしら。

フィンランドの人って、金髪とか目が青くても、顔そのものは、西洋人って感じじゃなくて、日本人っぽいんですよね。イタリアから、フィンランドに行って、感じたのは、子供がかわいくない....イタリア人の子供ってほんとかわいいんですよ。
牛太郎さんも、edcさんがおっしゃっていましたが、江守徹っぽいですね。
by keyaki (2007-03-03 12:08) 

Sardanapalus

>ターフェルはオタンダ人
歌ってますよ~。去年地元でロールデビューしたところです。そのときの舞台写真は↓でどうぞ。ぱっと見では、ROHのスカルピアの方が幽霊船長って感じですね(笑)
http://kirstensphotos.mediaobjects.co.uk/c868725_1.html
by Sardanapalus (2007-03-03 13:01) 

keyaki

おさむさん、
オランダ人、お時間があったら、ぜひ、ぜひ。
>新国をマメに観に行った方がお得かもしれないですね
そう思います。かなり、固定客もついてきたようですしね。
もう少し、期間をのばして、回数を増やしてもいいのではないかしら。
by keyaki (2007-03-03 13:15) 

keyaki

Sardanapalusさん、歌っているんですね。
写真、見てきました。
>ROHのスカルピアの方が幽霊船長って感じですね
パッと見、あれかとおもいました。ブリテンの「ビリー・バッド」
やっぱり、オランダ人はミステリアスでなくちゃ。
シマシマシャツはいかがなものかと、晴れた空~そよぐ風~の憧れのハワイ航路のマドロスさんじゃないですか。船長というよりは、水夫とか船乗りですよね。
by keyaki (2007-03-03 19:40) 

けい

私は、本日4日に行ってきました。
やぁ 男声合唱団良かった。それから指揮者と東京交響楽団の演奏が
よかった。東京交響楽団からあんな響きが出てくるとは、予想もできませんでした。

休日の午後 とっても充実しました
by けい (2007-03-04 20:06) 

keyaki

けいさん、コメントありがとうございます。
あっというまの3時間でしたね。
by keyaki (2007-03-05 08:36) 

助六

>新国名物、平日昼下がりのオペラ

これは知りませんでした。サイトみたら全演目に平日マチネー公演があるわけではないようですが、どういう趣旨なんでしょう? どういう方が来てるんですか?主婦?リタイヤ組?学生?どういう層が多いんでしょう?託児所があるのは立派ですね。

これも知りませんでしたが、週末・休日のマチネー公演の方が多いんですね。日本の交通・生活事情を考えれば、当然かも知れませんが、私が知ってる頃の二期会・藤原なんかは、やはり夜の公演数が多かったと思うので、ヘッと思いました。

パリでは、生活習慣上一般にマチネー公演は人気が落ちます。以前は日曜公演は原則15時開演でしたが、一時期、地方の客がホテル代を使わずに当日中に帰れるようにとの趣旨で、13時半開演に繰り上げられたことがありましたが、パリジヤンには不評で(私にも早すぎました)、今は原則14時半開演になりましたね。
1席1公演あたり100ユーロ(1万5000円。公演数が今より少なかった以前はもっと多かった)の国家補助金が投入されている以上、地方の客が重過ぎない負担で観劇できる可能性を確保しておかないと、必ず「なぜ田舎の納税者がパリのブルジョワに100ユーロ贈呈しなければならないのか」という政治的議論が出ます。

ナポリやパレルモで、平日の17-18時開演の公演がかなりあるのに驚いたことがありますが、理由を調べたり訊いてみないままになってます。何かご存知ありませんか?南伊の生活習慣と関係あるとか?イタリアは劇場は遅めですもんね。
by 助六 (2007-03-05 09:51) 

keyaki

助六さん、昼下がりの情事と同じで、妻子のために働いている夫のために、オペラ帰りに、夕飯の材料を買って、まともなものをちゃんと作れよ....又は、オペラを見に行くとわざわざ夫に知らせなくても、バレないよ...ということでしょうか。
新国としては、女性をターゲットにしているとおもいますが、私が働いているときも、すでに導入されていましたが、有給休暇を半日づつ使えますので、サラリーマンも、半休をとって、オペラ鑑賞は、十分可能ですね。
来ている層は、一階席は、やっぱり、「年金取り逃げ世代」の夫婦が目につきますね。
しかし、2時からは、ちょっと早すぎ、2時半がいいです。ランチもそこそこで、デザートとコーヒーをパスするはめになるんですよ。まあ、新国としては、劇場で、コーヒーを、という魂胆か、プチケーキなんかもおいてますね。

>ナポリやパレルモで、平日の17-18時開演の公演がかなりある
えぇーー、知りませんでした。8時半とかが普通ですよね。
5時からなら、当然、夕食はオペラが終ってからピザとか食べるんでしょうね。今でも、お昼がメインで、夕食は、軽くすませるという習慣は変わってないんでしょうね。???
by keyaki (2007-03-05 10:41) 

Sasha

「昼下がり...」に笑っちゃいましたぁ。個人的には、オペラ帰りに買い物、夕飯つくり、、、はゾッとしない。最近あまり行かないとはいえ、私にとって生オペラは「プチ家出」でもあるので。^^

「オランダ人」は、ちょっと心が動いたのにパスしちゃいました。歌手陣がよかったのなら行けばよかったなぁ。そういえば、「蝶々夫人」の売れ行きがよろしいようですね。
by Sasha (2007-03-07 09:14) 

euridice

>「蝶々夫人」の売れ行き
ジャコミーニ効果かしら? ... と、ソプラノさんにはファンが多い?といううわさを小耳にはさんだような気が・・???? 私はパスです。再演はパスの原則に従いました^^; 前のシーズンは堪能しました。
by euridice (2007-03-07 09:26) 

keyaki

Sashaさん
子供がいない時に出かけるよりも、子供を預けて出かける方がいいわよね。わかるわ〜その気持ち。子供から解放されたいわよね。
「あなた、今日の夜はオペラだから、早く帰って、子供のめんどうみてよね」ということですよね。それで、子供が寝ちゃった頃に帰って、「あなた、ありがと!」って、夫婦で、ウォッカで乾杯!

「オランダ人」は、カンペさんの迫力は、Sashaさん好みですよ、きっと。今晩と10日の土曜日もありますよ。
by keyaki (2007-03-07 09:36) 

keyaki

euridiceさん
年はとっても知名度のあるジャコミーニと、イタリア在住の日本人ソプラノ歌手さんのお里帰り凱旋公演の相乗効果でしょうね。新国が、関西弁でうまるんじゃないかしら。
ジャコミーニは、ライモンディと同じ年なんですよね。

《運命の力》のチケットの売れ行きがよくないとか。再演が早すぎるのも影響しているのではないかしら。
by keyaki (2007-03-07 09:43) 

ヴァラリン

私も行って来ました。

>昼下がりの情事

昼間にオペラなんて…って思ってたんですけど、今回初めて日本で夜の公演に行きました ⇒ 使用路線の事故処理のお陰で、ダイヤがめちゃくちゃになってて、帰宅したのは午前一時過ぎでしたーー;

ウチから初台まで、全然問題なく日帰りできる距離なんですけど、交通事情とか、オシゴトの都合など鑑みると、日本では週末のマチネ公演が主流になるのも、理にかなっている気がしました。
平日に休みが取れる仕事している人なら、昼間の方がいいかも。でも気分的にはやっぱり夜のほうが、何となく盛り上がりますよね。
by ヴァラリン (2007-03-09 17:05) 

サモトラケのにけ

 はじめまして。とてもよくわかりました。このオランダ人だけは、見にいけばよかったと後悔しています。再演されたら、絶対に行きます。今は6月のファルスタッフを期待しています。
by サモトラケのにけ (2007-04-22 09:02) 

keyaki

サモトラケのにけさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
新国のファルスタッフ,私も楽しみにしています。
by keyaki (2007-04-22 19:49) 

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